まずは、日本と先進諸国の道路をカンタンに比較してみよう
日本では普通だと思われていることでも、西洋の先進国ではそうではないことはとても多いです。 そういったものの中でも、日本の道路に見られる異質さは、けっしてお国柄で済まされるものはなく、日本にとてつもない損失をもたらしているのです。
日本の自動車交通は、先進諸国に比べて「遅く」て事故に遭う「危険性が高い」
写真はフランスの道路です。
平面交差道路ですが最高速度規制は90km/hです。 先進国に限らず、諸外国では、この程度の速度で平面交差の郊外道路を走行することはきわめてあたり前で、合法的なことです。
あまりにも遅い日本の自動車交通
画像の出典:酒田河川国道事務所ライブカメラ
次に、日本の道路です。
この写真のような、走行環境が良いにもかかわらず、最高速度規制が50km/hの道路を、警察の速度取締を気にしながら、人によっては幾ばくかの罪悪感を持って、70〜80km/hを上回る速度で走行していませんか。
自動車道など(高規格な道路)ではどうかというと、普通車の最高速度規制は多くの国より20km/h程度遅いです。
実際には、速度違反を犯して遅くない速度で流れていることもありますが、あくまでも合法的な速度で考えるべきです。もう違法に速く走ることを止めて、特に問題がない道路でなら、合法的に今より20〜30km/h速く走行できたら良いと思いませんか。
ここまでは、速さについての話でしたが、早さの話もしましょう。
「早さ」とは、平均速度の高さのことです。
例えば、街から街へ、工場から工場へ移動する場合の移動時間の短さのことを言います。
日本での平均速度は、信号交差点の少ない幹線道路でこそ(多くの場合、非合法ながら)50km/hを上回る事がありますが、せいぜい早くても40km/h台で、30km/h台という場合もざらにあります。
これが先進諸国なら、フランスなどを1万3000km走行した経験からいうと、平面交差道路の場合であっても70km/hから80km/h台の平均速度が得られます。遅くても60km/hです。日本では渋滞が問題視されていますが、渋滞していない場合でもとても遅いのです。ここまでは、いわゆる一般道での話です。
自動車道(高規格な道路)があるではないか、と思われるでしょう。普通の国ではごく当たり前に利用されているこの道路ですが、日本では限られた路線だけにしかない上に、料金の高さなどの悪条件が重なって十分に利用されていません。
このように、日本では多くの自動車の平均速度が、日本の遅い一般道の程度でしかありません。それに対して諸外国では、純粋に街の中だけを往来することが目的の交通を除いて、ほとんどの自動車交通が70km/hを上回る自動車らしい平均速度で移動することができるのです。
早くなるのに負傷事故が減る、まともな国の道路
日本のバカ道路が生んだバカな定説
日本では「自動車が普及して交通量が増えると、それに比例して交通事故も増える」ということが定説であり、当然だと思われていますが、それはとんでもない間違いです。
確かに、ある路線の交通量が非常に多くなって混雑すれば事故率は高くなりますが、そこから視野を広げて地域や国全体で見る必要があります。そうすれば間違いだとわかります。
一般に日本で先進国だと思われている国々(ドイツ、イギリス、フランスなど)は、約30年間にわたって、交通事故の件数や負傷者数を長期的傾向として継続して減少させることに成功しています。しかし、日本だけが唯一増大させてきました。
まともな道路整備をしている国では、自動車が普及して交通量が増えても
「交通事故が減る」だけでなく、さらに、全体では「早く」なるのです。
日本では、膨大な費用を投資して多くの道路を建設してきたにもかかわらず、数少ない高規格道路を通行する場合などを除いて、ある地点間の移動時間を見たときに、たいして早くならなかったり、遅くなることすらあるのに、事故が増え続けてきたのです。
死亡者数が減っても負傷者数が増え続ける、ニッポンの変な道路
交通事故による死亡者数は、日本でも先進諸国と同様に減っています。しかし、その要因は交通事故が減ったからではない、という点に注目する必要があります。
その話は本編に譲らせてもらいますが、普通のまともな国では、
世界一愚劣な道路交通行政
遅さと、事故に関する違いを知れば、日本がいかに問題のある道路政策、道路交通政策をしてきたのかを理解できるのではないでしょうか。
この事実から社会を見ると次のことがわかります。
本来の自動車交通が持つ能力を存分に発揮させて活かすことで、社会が享受できるはずの利益や豊かさといったものが、多くの諸外国では得られているのに、世界第二位の道路予算を投じている日本では十分に得られていないのです。
それどころか、自動車を十分に活用できているまともな先進国では、いまや、「よほど運が悪くなければ事故に遭わない」という状態になってきている時代に、日本では、
この道路政策、道路交通政策は、愚劣(愚かで劣っている)と表現しても過言ではありません。
道路交通がまともでないことが与える事故や公害による社会的損失と、経済と社会への悪影響は、本当に真剣に考えられなくてはならないはずです。あなた自身も、愚劣な道路交通行政による、経済的・身体的な被害者や犠牲者であるということを理解してください。
大変残念なことに、道路交通行政にかかわる方々でさえ、そのほとんどが、この結果をもたらした道路整備の本質的な誤りを理解していないようです。 例えば、負傷者数が長期的傾向として増え続けてきた理由ですら突き止められていないのです。
このありさまで、本質的な交通事故抑制政策ができるわけがありません。そもそも、負傷者数が増え続けてきたということが普通の国と違う状況にあるという問題の認識すらないのかもしれませんが……
ともかく、これまで通りのやり方を改めないで道路整備を続けても、開いてしまった大きな較差を抜本的に埋める事は不可能です。そればかりか、ますます差を開けられてゆくことすら考えられます。
>> まっとうにしよう へ